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DX入門

SaaSの乱立を整理する——社内ツールを棚卸しして削減した実例

SaaSの乱立を整理する——社内ツールを棚卸しして削減した実例

「気づいたら社内にツールが増えすぎていた」——こう感じている情シス担当者や経営者は少なくありません。部署ごとに別々のツールを導入し、似たような機能のサービスが並立し、誰も使っていないのに課金だけ続いている。

SaaSは月額数千円から始められる手軽さが便利な反面、放置すると気づかないうちにコストが膨らみます。この記事では、社内のSaaSを棚卸しして整理した実例をもとに、進め方と判断基準を解説します。


SaaSが乱立する理由

まず、なぜSaaSが乱立するのかを整理します。

承認なしで契約できる手軽さ:クレジットカードがあれば誰でも即日契約できるSaaSは、部署ごとに「試してみよう」が積み重なりやすいです。導入時に情シスや経営者の承認が不要なケースも多く、気づいたときには把握できていないツールが複数存在する状況になります。

担当者の異動・退職で引き継がれない:導入した担当者が辞めたあと、誰も使い方を把握していないまま契約だけ続いているケースがあります。「解約しようとしたが、管理者アカウントの情報がわからない」という事態も珍しくありません。

無料トライアルの自動課金:無料期間で試して、そのまま解約し忘れた。月額1,000〜2,000円のツールは「まあいいか」と放置されやすく、積み重なると無視できない金額になります。


棚卸しで月額コストを削減した実例

ある従業員30人規模のIT系企業で行ったSaaS棚卸しの実例です。

棚卸し前の状況:部署ごとにツールを自由に導入しており、全社で使っているSaaSの総数を誰も把握していませんでした。経費精算の明細を確認したところ、月額費用が合計で約45万円に達していることが判明しました。

棚卸しの結果:全部で38種類のSaaSが契約されていました。そのうち「誰も使っていない」または「別のツールと機能が重複している」と判断されたものが12種類。解約・統合によって月額コストを約18万円削減できました。削減率は約40%です。

主な削減内訳: ・類似のプロジェクト管理ツールが3種類並存→1種類に統一(月約6万円削減) ・退職者のアカウントが残ったままのツールが複数→アカウント整理で月約4万円削減 ・トライアル後に解約し忘れたツールが5種類→即時解約で月約3万円削減 ・ビデオ会議ツールがZoom・Teams・Google Meetの3種類→Google Meetに統一(月約5万円削減)


棚卸しの進め方

ステップ① 契約しているSaaSをすべて洗い出す

まず全契約の把握から始めます。以下の方法で漏れなく洗い出します。

経費精算・クレジットカードの明細を確認する:月次で引き落とされているサービスをすべてリストアップします。部署ごとに使っているクレジットカードがある場合は、すべてを確認対象にします。

各部署の担当者にヒアリングする:「使っているツールを教えてください」と各部署に聞きます。明細に出てこない無料プランのツールも、業務で使っているものはリストに加えます。

メールの受信履歴を確認する:SaaSからの請求メール・利用明細メールを検索すると、見落としているサービスが見つかることがあります。

ステップ② 各ツールの情報を整理する

洗い出したツールに以下の情報を付加します。

・ツール名 ・月額費用 ・契約者・管理者 ・利用部署・利用人数 ・主な用途 ・類似ツールとの重複有無 ・最終利用日(ログイン履歴など)

この一覧を作ることで、「誰が何のために使っているか把握できていないツール」が可視化されます。

ステップ③ 継続・統合・廃止を判断する

各ツールを以下の基準で分類します。

継続:月に複数回使われており、代替手段がない。または他のツールとの連携で業務フローに組み込まれている。

統合:機能が他のツールと重複している。どちらかに統一することで業務に支障がない。統合先のツールに移行コストがかかる場合は、移行コストと削減できる月額費用を比較して判断します。

廃止:過去3ヶ月以上ログインがない。担当者が退職していて引き継がれていない。無料トライアルの解約し忘れ。これらは即時解約の対象です。

ステップ④ 解約・統合を実行する

廃止対象のツールは速やかに解約します。解約手続きに管理者アカウントが必要なケースがほとんどです。アカウント情報が不明な場合は、サービスのサポートに問い合わせると対応してもらえることが多いです。

統合対象のツールは、移行期間を設けて段階的に切り替えます。いきなり使えなくすると現場が混乱するため、「来月末で廃止」と事前に周知し、移行先の使い方を共有してから廃止します。


ツール乱立を防ぐための仕組み

棚卸しで整理しても、同じ状況が繰り返されては意味がありません。再発防止のための仕組みを作ります。

SaaS導入の承認フローを作る:新しいSaaSを導入する際は、情シスまたは経営者の承認を必須にします。「まず無料で試す場合でも申請する」というルールにすることで、野良SaaSの発生を防げます。

SaaSの台帳を作って定期的に更新する:棚卸しで作った一覧を「SaaS台帳」として管理します。半年に1回、台帳を見直して不要なツールがないかを確認する習慣をつけます。

アカウント管理を一元化する:担当者の退職時に、その人が使っていたSaaSのアカウントを確実に整理するフローを作ります。オフボーディングチェックリストにSaaSのアカウント削除を組み込むと漏れが防げます。


まとめ:SaaSの整理は最もコストパフォーマンスが高い改善の一つ

SaaSの棚卸しは、追加投資なしにコストを削減できる数少ない施策です。多くの会社で、棚卸しをするだけで月額コストの20〜40%を削減できる余地があります。

まず経費精算の明細を開いて、毎月引き落とされているサービスを書き出すところから始めてください。それだけで、把握できていなかったコストが見えてきます。

「自社のSaaSを整理したい」「どのツールに統一すればいいか相談したい」という場合は、30分の無料相談でご状況を聞かせてください。現在の契約状況を聞きながら、整理の優先順位を一緒に考えます。